企画展

山中suplexの別棟「MINE」キュレータープログラムVol.4

 

ビジター・キュー

VISITOR CUE

ステートメント

都市や生活の中ですでに起こっている現象や経験している出来事を再び見直すことを通して、表現分野の垣根を越えた演劇の場について思考し、劇場内外で活動を行ってきたレトロニム。今回は、大阪・心斎橋にほど近い山中suplexの別棟 「MINE」(およびその周辺)を拠点に、「見ること」が中心となって立ち上がる演劇性をテーマとする2日間の企画展を開催します。

 

演劇では、それを構成する人の声や言葉や行為、もの、光や音の設えなど、一つ一つの関わりあいによって上演が立ち上がると同時に、観客はそれらを見ること、聞くことなどを通してさまざまな意味を目の前の出来事に宛てていきます。その中でも、特に「見ること」に焦点をあてると、対象と印象、現実と想像、景観と風景、わたしとあなた、などとのあいだにあって、観客によって確認され、寛容される距離は、重なりやズレとして認識し直されることとなります。この距離を誘発し、変化・伸縮を期待する観客の視線を、レトロニムでは「演劇的フレーム」と呼んでいます。

 

劇場から演劇を流出させ、舞台と客席という関係性の外に「演劇的フレーム」を開いていくことは、すでにある状況や環境のさなかに観客席を設置していくことだと言えるかもしれません。そして、「見る」という行為を実践することは、ときに私自身を超えて、他者の存在やその想像力に身を委ねることだと思います。

 

本展は、作品の輪郭を超え、見るひとそのものへの視線を含めた広範に渡る視野を持つ美術家・俳優・演出家の5名の方々にお声がけし、実現が叶いました。「MINE」というかつて住居だった空間では、美術家・俳優・演出家が「訪問者 / 観客」の存在をきっかけに分野の垣根を越えて話しあうプロセスを経て、美術家は俳優を前に観客を想像し、俳優は展示作品を前に観客を演じ、演出家は観客の視線の先を俳優に限定せず、そこにあるものから演劇を始めることを試みます。三者のこの振幅が、そこに訪れる者の視線や距離の変化をも誘発する場となることだろうと思います。

 

本展をきっかけに、美術や演劇の作品を見ることはもちろん、生活の中でのさまざまな場面を行き交うときにも選択可能な遊び心ある一つの視点として、「演劇的フレーム」を開示することができたら幸いです。

 

レトロニム


ビジター・キュー VISITOR CUE

 

会場 : 山中suplexの別棟 「MINE」

 550-0013 大阪府大阪市西区新町2-9-4 NANEI 新町 bld. GALLERY 02 街区

 

オープン当時の様子

photo by Kai Maetani

会期 : 2023年 11月11日(土) 、12日(日)

 

時間:13:00-19:00(当日入退場自由)

 

入場料 : 500円 *予約不要・入退室自由 *当日現金精算

 

会期中、本展示の図録のほか、参加アーティスト及びレトロニムの印刷物等を販売いたします。

 

 

 ○関連イベント

 

ワークショップ

「都市にとっての他者になる in 心斎橋」

 

「状況の設置が整えば、客体としての芸術作品がなくとも、その代理物が自動的に充填されてしまうというシアトリカリティの逆説を観ている」というのは、岡崎乾二郎が『ルネサンス 経験の条件』の中である芸術作品に対して述べた言葉ですが、これを演劇のことだと積極的に読み替えてみます。すると、「状況の設置が整えば、客体としての俳優がいなくとも、視線の対象や状況そのものが自動的に上演されてしまうという逆説的な演劇性を観てしまう」ということなのではないだろうか、と思います。

これは、持ち運び可能なディスプレイに「ト書(=行為の指示書き)」を表示させながら心斎橋を巡り、街や路上を行き交う人に紛れて行う演劇のワークショップであり、ただ観光客でもなく、ただ住人でもなく、ただ通行者でもなく、街の想定から外れてみるワークショップです。

演劇の経験の有無に関わらず、どなたでもお気軽にご参加ください。

 

====

 

日時:2023年11月11日(土) 11:00~13:00 / 12日(日) 11:00~13:00

各回定員:10名

受付会場:山中suplexの別棟 「MINE」4F

参加費:500 *当日現金精算 *ワークショップ当日に限り展示入場料無料

 

お申し込みフォームはこちら


キュレーション・企画・製作レトロニム

グラフィックデザイン:北原和規

記録撮影:中谷利明

主催:山中suplex/Yamanaka Suplex

共催:NANEI ART PROJECT

助成:大阪市芸術文化振興事業助成金、公益財団法人小笠原敏晶記念財団



アーティスト

 

黒木 結 美術家

Yui Kuroki / Artist

 

2017年京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。

身近な問題を自分や社会の視点から分かろうとしたり、答えを見つける機会として、身近な人の協力を得ながら作品制作や展覧会企画などを行っている。

個人での活動のほか、「おばけの連判状」というグループ活動にも参加。

 

近年の主な発表に「鑑賞のプロセス:フランシス・アリス」(THEATRE E9 KYOTO, 京都, 2023)がある。

 

WEBサイト  https://yui-kuroki.tumblr.com/

 

《鑑賞のプロセス:本山ゆかり〈Ghost in the Cloth〉シリーズ》 2022

 

《個人的な解決》シリーズ3点 2013~2022

撮影:小山渉


Photo by Shun Ikezoe

斎藤 英理 美術家

Eri Saito / Artist

 

1991年福島県生まれ、神奈川県在住。和光大学表現学部芸術学科卒業。記憶や認識など目に見えない不確かな動態をモチーフに、主に映像メディアを用いて制作し、ギャラリー空間での展示と劇場空間での上映活動を同時並行で行なっている。2022年より飯嶋桃代+斎藤英理の活動として、根岸外国人墓地をきっかけに考える国際児の研究とマイクロアグレッションの問題をテーマにリサーチを進めている。

 

WEBサイト  https://www.erisaito.info/

 

《Social Circles》2023, シングルチャンネルビデオ, 15分36分 

《見えないものを想像する》2022, シングルチャンネルビデオ, 1543


photo by Yujiro Sagami

福井 裕孝  演出家

Hirotaka Fukui / Theater Director

 

1996年京都生まれ。演出家。人・もの・空間の関係を演劇的な技法を用いて再編し、その場に生まれる多層的な状況を作品化する。近作に『インテリア』(2020,2023)、『デスクトップ・シアター』(2021)、『シアターマテリアル』(2020,2022)など。2022年度よりTHEATRE E9 KYOTOアソシエイトアーティスト。

 

WEBサイト  https://www.fukuihirotaka.com 

 

《インテリア》 2023

  photo by bozzo

 

《シアターマテリアル 2022

photo by Yujiro Sagami 


  

宮崎 竜成 美術家

Ryusei Miyazaki / Artist

 

1996年、京都府生まれ、石川県在住。あらゆる物事が固有にあるということと、それがある連続の中の一つであるということとを同時に含むことを「リズム」として捉え、それを手がかりに固有のものが固有のままあるまとまりを持つ運動の形をあらゆる手段でつかまえようと模索中。それは時に絵画や音響といったメディアと結びついた作品になったり、自分自身が生きている環境のインフラ構築へと向かったりしている。 

 

instagram https://www.instagram.com/ryusei.miyazaki/?hl=ja

 

 極悪 Egregious》2023, インスタレーション

 

《この会話が成立しているかわからないのに、この場が進んでいるのはおかしい。》2022, パフォーマンス


 

米川 幸リオン 俳優

Leon Koh Yonekawa / Actor

 

俳優。1993年生まれ。三重県鈴鹿市出身、京都市在住。京都造形芸術大学映画学科俳優コースと映画美学校アクターズコースを卒業。近年では、チェルフィッチュ等の作品に出演として参加している。また映画・演劇において自身での創作活動も行なっている。主な作品に『あっちこっち、そっちどっち』(2020/映画)、『(あるいは)限界ニュータウン』(2022/演劇)、『つちのちのちうち』(2023/映画)など。

 

《あっちこっち、そっちどっち》2020

 

《つちのちのちうち》2023

 

 



キュレーター

レトロニム

Retronym

 

俳優の瀬戸沙門、陶芸を素材として扱う美術家の武内もも、演出家の野村眞人からなる京都のアート・コレクティブ。2022 年に劇団速度から名称を変更。「人とその周辺」にあるコンテンポラリーな物事や出来事をマテリアルに、それぞれの視点を通して生まれる面白がり方を、遊び心ある方法やオブジェクトによって共有することを目指す。

 

photo by shimizu kana



◯ 山中suplex

山中suplexは、2014年に設立された滋賀県大津市山中町にある共同スタジオです。京都の市街地から車で約15分、京都と滋賀の県境にある比叡山に位置しており、樹脂、金属加工、石彫や、木工などの立体表現や、屋外での大規模な作品制作を実現することが可能です。当初から段階的に制作スペースや専門機材などを拡充し、2016年からは半屋外の「山中suplexギャラリー」も設置しました。個人制作だけに限らず山中suplexとしても、イベント、展覧会、ワークショップなどを企画・実施しており、制作だけではなく発表のスペースとしても機能しつつ、芸術家による持続可能な活動への支援や芸術家同士のフレンドシップに重きを置いて活動しています。これまでの主な展覧会に、「余の光、血の塩」(東京・京都、2021)、「類比の鏡/The Analogical Mirrors」(滋賀、2020)、「山中suplexのみんなと、尼崎にいるあなた」(兵庫、2019)など。また、202212月より、期間限定のプロジェクトスペース・山中suplexの別棟「MINE (みね)(大阪) を運用中です。(webサイトより引用)

 

山中suplex|https://www.yamanakasuplex.com/top

 

 

◯ 山中suplexの別棟 「MINE」について

山中suplexの別棟「MINE」は個々のアイデアを実現していく場所としてのプロジェクトスペースです。 2022年12月のイベント開始時点から2023年11月の契約終了までを一区切りとして、山中suplexが中期的な運用を行なっていきます。大阪をはじめ、国内外から様々なクリエイターを招聘し、作品を制作し、その作品が残っていくことで少しずつ部屋の雰囲気が変化していったり、部屋ごとに企画展や演劇パフォーマンス、トーク、飲食イベントなど多様なコンテンツを実施したりすることで、ジャンルレスに人々が滞在し、新しい繋がりが生まれる空間となります。

 

山中suplexの別棟「MINE」|https://yamanakasuplexannex.com/

 

 

○ キュレータープログラムについて

キュレータープログラムとは、主にアーティストや文化従事者とともに、物理的空間や相互意思伝達の中に渦中に身を置きつつ、すでに協働している、あるいは今後、そのように活動していきたい若手キュレーターに向け、キュレーティングする機会や時間を提供するプログラムです。かつては大家さんが4・5階に住みながら、3階では借家として様々な人が暮らしてた旧峯ビルの文脈やリソースを踏まえ、サイトスペシフィックな条件下でのキュレトリアル・プラクティスを実践する場となります。